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テンシステムは2000年に設立したプロダクションです。広大な且つ深遠なるヒマラヤ地域を「地球を映し出す鏡」と捉え、様々な活動を展開しています。

「ヒマラヤ」との付き合いが始まったのは1987年。大学時代のチベットの旅でした。ヒマラヤの崇高な山並み、荘厳なチベット仏教美術、そして、ユーモアと優しさに溢れたチベット人たち。初めて接する世界に圧倒、驚嘆、魅了されました。


味を占めた私は、翌年早々、今度はネパールのクーンブ地方へと向かいました。このエリアは世界最高峰エベレストを有する世界遺産・サガルマータ国立公園。カラパタールの丘より間近に仰ぐエベレスト(チョモランマ)はやはり格別で、昼間なのに、そこに「宇宙」を感じました。エベレストのみならず、8千メートル峰ローッエ、”母の首飾り”と呼ばれ地元民に愛される優美なアマダブラムなど、行く先々で素晴らしい山々が出迎えてくれたのです。


しかし、そのネパールの旅で最も心を打たれたのは、山ではなく「人間」でした。


地元のシェルパ族が営むある小屋に宿泊した時のことです。谷筋が夜の帳に包まれる頃、その家の老婆が聖山タムセルクに向かい祈りを捧げていました。銀白色の頂が夕日に染まっています。チベット仏教の経文をかすかな声で唱えながら、老婆の瞳は山から離れない。その姿はまるで、一編の良き詩の様に繊細で愛おしい。「彼女のこんな静かな瞬間(とき)が、いつまでも大切に守られて欲しい」との思いが込み上げてきました。

もう一つの印象的な人々との出会いは、チベット難民コミュニィティーでありました。前年のチベットの旅で、イギリス人バックパッカーを通じて「チベット問題」のことを初めて知りました。更に、彼から多くのチベット人がヒマラヤを越えネパールへと逃れている事実を聞かされ、「当事者」に是非会って話を聞きたいと思っていました。

チベットの民芸品を観光客に売り細々と暮らす難民たち。静かな口調で語られる彼らのストーリーは衝撃的なものでした。「何故、私(日本人)はこの重大な事実を知らないのか? 」「何故、日本のマスコミは伝えていないのか!?」−真っ先に思ったことです。(その後マスコミ(TV局)で働く様になって、その「理由」が分かりました)

その時の率直な思い、憤りが、『チベット難民〜世代を超えた闘い』という一つの長編ドキュメンタリーの制作に繋がりました。

学生時代の旅の後、TV局でのヒマラヤ取材、ビデオジャーナリストとしてのチベット難民取材を通じてヒマラヤの多くの知己を得ています。

2004年、ヒマラヤ関連の世界の秀作を上映する国際映画祭・Himalaya Film Festival (オランダ)に招待され、そこでネパール、インド、ブータン、チベットの映画監督、ジャーナリスト、アーティストとの出会いがありました。ヒマラヤの「輪」は更に広がったのです。2006年には、多くの皆様の御協力のお陰で、東京にてヒマラヤ国際映画祭Tokyo2006を実現出来ました。

その後、NPO法人ヒマラヤ・アーカイブ・ジャパンを設立し、ヒマラヤ国際映画祭を中心に様々なヒマラヤ関連のプロジェクトを進めています。


ヒマラヤの地に足を踏み入れて、早、20年。しかし、ヒマラヤを巡る旅は未だ途上です。今後も、独自の視点・方法で深遠なる世界・「ヒマラヤ」を考え、御紹介していきたいと思います。

皆様の変わらぬ御協力を心より御願い申し上げます。


田中 邦彦